理事長ご挨拶

3年余にわたったコロナ禍はおおむね終息し、昨年5月には感染症法上の5類に分類替えされました。これを契機にJWセンターは、細心の注意を払いつつ、コロナ前の業務体制に戻したところです。

コロナ禍の3年間に世界は大きく変わりました。なかでも地球温暖化の進行は、極めて憂慮すべきことです。昨年夏の猛暑は危険なレベルに達し、日本でも世界でも観測史上最高の気温となっています。これに伴う豪雨、浸水、洪水、山火事等の災害は世界各地で発生しています。グテーレス国連事務総長は「地球温暖化(global warming)の時代は終わり、地球沸騰化(global boiling)の時代が到来した」と警鐘を鳴らし、これ以上の悪化を食い止めるために、世界各国に取り組みの強化を求めています。

日本も3年前に、世界の主要国と協調して2050年脱炭素に舵を切りました。脱炭素の実現には、社会経済の大変革が求められます。エネルギーの非化石化やエネルギー効率の向上は必須ですが、資源循環を加速し循環経済へ移行することもエネルギー対策と同等に重要です。国連の国際資源パネル(IRP)は、「天然資源の採取と材料・燃料・食料への加工の過程で、世界の温室効果ガスの約半分が排出されている」と指摘しています。実際、鉄、非鉄金属、プラスチック等の製造原料を天然資源から廃棄物由来の再生資源に転換すれば、温室効果ガスの排出は9割以上削減されるとの報告もあります。JWセンターは、電子マニフェストの運営主体として、時代が求める資源循環の加速に静脈資源情報の面で貢献したいと考えています。

電子マニフェスト事業は、社会全体のデジタル化を追い風に、順調に拡大しています。昨年1年間の電子化率は80%を超えました。2017年に電子化率が待望の50%に達し、その後の6年間で更に30%増加したことになります。電子マニフェストは、産業廃棄物の適正処理を確保するための措置として導入され、今や年間4,000万件以上の産業廃棄物排出・処理データが電子的に蓄積されています。これらの産業廃棄物に係るビッグデータは、有効に利活用することで循環型社会の形成や資源循環の加速を推進するツールになります。JWセンターでは、電子マニフェストのビッグデータを本格的に解析するソフトウエア(電子マニフェストBIツール)を導入し、都道府県・政令市でも利用できる環境を整えました。その過程で、電子マニフェストデータを資源循環の基礎情報として活用するためには、登録情報の拡充等の電子マニフェストシステムの強化が必要であることが明らかになってきました。

現行のマニフェスト制度では、産業廃棄物の排出源から中間処理施設までのトレーサビリティ情報が登録されていますが、中間処理施設での処分の方法や処分後の再資源化物等の量は登録されていません。これらの項目が登録されるようになれば、廃棄物に係る資源循環の全容が、地域ごとにも全国的にもリアルタイムに近い状態で把握できるようになります。静脈資源の「見える化」が実現すれば、国や自治体でのきめ細かな施策の展開はもちろん、事業者間の動静脈連携が進み、再生資源の利用が拡大し、ひいては循環経済への転換に大きく貢献することが期待されます。このためJWセンターでは、学識経験者、自治体専門家、産業廃棄物処理業者にご参画いただき「電子マニフェスト情報利活用高度化検討委員会」を設置し、処分方法等のマニフェスト項目への追加や電子マニフェスト上で簡便に操作できるシステムの開発について、1年余にわたり検討を進めてきました。検討結果は昨年春に環境省に提出したところです。環境省では昨年夏から、中央環境審議会で静脈産業の脱炭素型資源循環システム構築について制度的な検討を進めています。その柱の一つである静脈資源情報プラットホームの構築について、JWセンターは電子マニフェストシステムを拡充して対応したいと考えています。この意味で、今年は電子マニフェストが新たな飛躍を遂げる出発の年になると受け止めています。

資源循環の加速は、脱炭素の観点のみならず経済安全保障の観点からも極めて重要です。これはロシアの侵略で勃発したウクライナ戦争を契機とした素材や穀物の高騰からも明らかです。特に、産業廃棄物の中でも相当量を占めているバイオマス廃棄物の資源化が、ますます重要になっています。JWセンターでは一昨年より、家畜ふん尿、下水汚泥、食品廃棄物等の処理や再資源化の実態把握を中心にこの分野の調査を進めており、資源循環の推進に貢献したいと考えています。

JWセンターのもうひとつの主要事業である講習会事業は、コロナ禍の3年間は、感染予防を徹底するため、会場での講義を中止し、オンラインでの講義動画視聴と会場試験を組み合わせた方式で実施してきました。コロナ禍の終息を受けて、昨年度からは、受講者の希望を踏まえオンライン方式を中心としつつ、1割は対面式で実施しています。今年度も、オンラインと対面とを併存する形で実施いたします。

JWセンターは、皆様のご支援により、昨年11月30日に設立35周年を迎えることができました。これからも、大きく変化する社会や時代の要請に応えて、設立の目的である産業廃棄物の適正処理と循環型社会の形成推進に資する事業をさらに充実・発展させてまいります。今後ともよろしくお願いいたします。

2024年4月
公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
理事長 関 荘一郎

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